STORY
2021年にデビュー45周年を迎えたChar。布袋寅泰やAI、三人の侍(奥田民生/山崎まさよし/Char)といった豪華アーティストと共演した日本武道館公演(2021年)、カルメン・マキ&OZとの対バン(2022年)に続くデビュー45周年企画ライブの第3弾として、2023年6月27日と28日の2日間に渡り東京・LINE CUBE SHIBUYA(旧:渋谷公会堂)にて『Char 45th Anniversary Tribute Live』が行なわれた。このライブの模様をCD&Blu-ray/DVDに収録した映像作品『Afterword』が、12月21日(木)にZICCA RECORDSから発売される。
このトリビュート・ライブは、Charがジョニー吉長(d)、ルイズルイス加部(b)とともに数々の伝説を打ち立ててきたJohnny, Louis&Char(以下JL&C)の楽曲を演奏する『Day1 ~JL&C session~』、そしてJL&Cがグループ名を変えて1982年に活動をスタートさせたPINK CLOUDをフィーチャーした『Day2 ~PINK CLOUD session~』として開催。JL&CとPINK CLOUDは2007年に再結成コンサートを開催するも2012年にジョニー吉長、2020年にルイズルイス加部が逝去したことにより、オリジナル・メンバーによるライブを観ることは永遠に叶わなくなってしまった。しかし今回、澤田浩史(b)とThe BONEZのZAX(d)という近年のCharのライブを支える強力なメンバーを迎えてのパフォーマンスが実現。加えてバンドに縁の深い金子マリ(vo)が『Day1 ~JL&C session~』に、そしてJL&C結成のキーマンでもあるミッキー吉野(key)が『Day2 ~PINK CLOUD session~』にゲスト参加しているのもトピックだ。
ライブ全編にわたりフェンダー・ムスタングをプレイした『Day1 ~JL&C session~』では、ソロ・ギターの美しい旋律が耳を掴んで離さない「Kindesalter」を皮切りに、ハードなロック・リフがアンサンブルを牽引する「Wasted」、日本語詞のメロウなソウル・ナンバー「風に吹かれてみませんか」といった楽曲をプレイ。ジョニー吉長のボーカル曲だった「Cloudy Sky」をCharが歌う姿も必見だ。短いMCを挟んだ後、金子マリのソロ楽曲「Don’t Cry My Baby」、そして「Finger」、「Head Song」とスリリングに展開していくキラー・チューンを畳み掛け、本編ラストは「You're Like A Doll Baby」でフィニッシュ。アンコールでは代表曲の「からまわり」を披露。ギターとベースによる長尺のユニゾン・フレーズは、このライブのハイライトと呼べるシーンだろう。ラストは「Natural Vibration」で大団円。最後にステージを去るCharがJL&Cのエンブレムが入った腕章を優しく触り「たまには思い出してやってください」と客席に語りかける姿に胸を熱くしたファンも多いのではないだろうか。
『Day2 ~PINK CLOUD session~』は、骨太なロック・リフを軸に変幻自在のギター・ワークで魅せる「Pink Cloud」からスタート。この日はPINK CLOUD時代のトレードマークであったバーガンディミスト・フィニッシュのフェンダー・ストラトキャスターを手に、表情豊かなフレージングでアンサンブルに彩りを加えていく。ゲストにミッキー吉野を迎えて披露されたのは、幻想的なプログレッシブ・ナンバーの「In The Space」。トリオ・バンドで創り出すアンサンブルにグルーヴィな鍵盤フレーズが入ることで更なる進化を果たした唯一無二の音世界は必聴だ。加えて「Hug Letter」、「Future Child」、「Sunset Blues」、「Sing,Sing,Sing」、Charが歌う「長い髪の少女」(ザ・ゴールデン・カップス)など、ミッキー吉野のキーボードを加えた素晴らしいアレンジも本作でしか観ることのできない必見ポイントと言えるだろう。アンコールで演奏されたPINK CLOUDの看板曲である「Drive Me Nuts」、そして鳴り止まぬ歓声と手拍子に応えて「Smoky」が披露され、充実のライブは幕を閉じたのだった。
常識にとらわれない感性によってトリオ・バンドによる表現の可能性を大きく広げたJL&CとPINK CLOUD。この『Afterword』=“あとがき”と名付けられた作品からは、Charという音楽家に多大な影響を与えた2バンドの魅力が存分に伝わってくるはずだ。ハードロック、ファンク、プログレを始めとする多様な音楽性を飲み込んだ先鋭的かつ実験的な楽曲群が、約40年以上もの年月を超えて躍動する至高のパフォーマンスをたっぷりと味わってほしい。