2021年12月11日、日本武道館にてCharの音楽活動45周年を記念したスペシャル・ライブが開催された。この記念すべき一夜の模様を収めた映像作品『Char 45th Anniversary Concert Special at Budokan Tokyo 』が、2022年4月13日(水)にZICCA RECORDSから発売される。
アニバーサリー・イヤーを締めくくる舞台となったのは、東京・九段下の日本武道館。会場を埋め尽くしたファンの顔ぶれは老若男女を問わずさまざまで、時代とともに多くの聴き手の人生に寄り添う音楽を響かせ続けてきた音楽家であることを改めて実感する。
オープニング・アクトとして登場したのは、竹中尚兵衛、奥田民之助、山崎将之進から成るアコースティック・ユニット、“三人の侍”。リラックスした雰囲気の中、軽妙なトークを交えつつ「エレクトリックおばあちゃん」、「ホテル・カリフォルニア」、「上を向いて歩こう」といったナンバーを披露。アコギを手に音楽で楽しそうに遊ぶ姿に、Charと石田長生のユニットであるBAHOを重ね合わせたファンも多かったことだろう。3人の歌声と3本のアコースティック・ギターのみというシンプルな編成ながら、名手たちが生み出す表情豊かなアンサンブルに、表現の奥深さを垣間見た貴重なステージだった。
舞台転換の後、デビュー当時を想起させるような白いセットアップ・スーツでキメたCharがステージに登場し、インストゥルメンタル・ナンバーの「A Fair Wind」で本篇がスタート。バーガンディミストのフェンダー・ストラトキャスターを手に「Everyday, Everynight」、「All Around Me」と畳み掛けると、16年ぶりの新作アルバム『Fret to Fret』に収録されたナンバーを立て続けに披露。淡々と刻まれるビートにロックなワウ・ギターが華を添える「Fret to Fret」では、ソロにジミ・ヘンドリックスの「パープル・ヘイズ」のテーマを盛り込むなど、チラリと覗く“遊び心”に思わずニヤリとさせられる。「Infant Elephant」ではVOX製のモデリング・ギターであるStarstreamを使い、シタールのようなシンセ・サウンドで独特な楽曲の世界観を見事に描き出してみせるなど、最新のCharの表現をたっぷりと堪能できるのも見所のひとつだ。またスロー・バラードの「Wodering Again」は、本公演のハイライトとも呼べるほど素晴らしく、ラストの咽び泣くように歌い上げる長尺のギター・ソロは観る者の心を打つ名演だと言えるだろう。
ライブ後半、布袋寅泰をゲストに迎えて披露された「Shinin’ You Shinin’ Day」では、カッティングを自身のスタイルとするトップ・ギタリスト同士の極上のセッションが展開。布袋は偉大なる先輩へのリスペクトに満ちたプレイでステージに華を添えており、名曲をさらなる高みへと導いていく白熱のパフォーマンスは必見だ。加えて、布袋が初めてメジャー・セブンのコードを覚え、のちにBOØWYの「Bad Feeling」へとつながるきっかけになったという「闘牛士」を43年の時を超えて、聖地・武道館で一緒に演奏しているのも胸が熱くなるポイントだろう。本篇ラストを飾るのは、シンガーのAIを迎えての「Anytime」と「Smoky」。ハスキーでパワフルな歌声は抜群の存在感を放っており、グルーヴィなアンサンブルをさらに躍動させている。
アンコールでは、今やライブに欠かせない楽曲となった「Moving Again」、PSYCHEDELIXの「Rainbow Shoes」、さらにはフェンダーの創立75周年を記念して制作された「We Love Music」を豪華ゲスト陣とともに披露。そして最後には、ステージに独り残ったCharが「気絶するほど悩ましい」をアコースティック・ギター1本で弾き語り、3時間を超えるライブは幕を閉じた。
遊び心を忘れることなく、時代の変化に刺激されながら常に新たな音楽を生み出し続けてきた不世出のギター・ヒーロー、Char。過去の名曲から最新の表現まで、進化の歩みを止めない音楽家としての魅力が凝縮された素晴らしいライブ・パフォーマンスはもちろん、貴重なリハーサルの模様や公演の舞台裏を収めたドキュメンタリーも含め、さまざまな角度から特別な一夜を追体験できる映像作品に仕上がっている。(文/尾藤雅哉)